思春期(受診動向) 対象年齢12歳~18歳 平成27年5月~令和1年5月 総数1852名中 観察が可能な423名が対象

  • 平成27年5月(開院)から4年後の令和1年5月まで、過去4年間にわたり当院を受診した12歳~18歳までの患者さんの総数は1852名で、男子生徒34%、女子66%で女子のほうが多い結果となりました。これについては、男子より女子のほうがクリニックに対して抵抗感が少ない(受け入れが良い)結果ではないかとおもいます。
  • 状態別受診動向(受診のきっかけとなった理由について)                    。最も多いのは、体調がわるくなって不登校になるケースで68%となっています。具体的な例をあげると、教室に入ると動悸がして気分が悪くなる。電車に乗ると吐き気がするので、乗れない。朝起きれない。同級生から、どう思われているか気になって、動悸が止まらない。などで 同級生などでいじめがあるわけでもなく、とりあえず体調不良での不登校で内科的に異常はないので、精神的なものではないかといわれ、受診するケースです。
    次に多いのが感情の不安定な部分で12%ありました。登校は普通にできており、学校でのトラブルは全くなく、家庭内での激しい興奮や家出など親子で摩擦が絶えないケースで、本人に受診の希望はなく、親が困りはてて連れてくるケースです。
    次は不登校、登校に関係なく、部屋で自傷行為があるケースで、カッターでのリストカットの自傷行為が多くすでに精神症状(幻聴、妄想、自生思考、など ARMS含む)が出現しているケースです。
    その他は家庭内での窃盗、児童相談所からな依頼などのケースです。
    最近の傾向では児童思春期の受け入れ医療機関が増えたこともあって、早期に親が連れて来るようになりました。。
  • ②本人が一番つらいと訴える精神症状(精神症状がない人は除外しています)  精神の症状とは健常者にはない精神の症状で苦痛や恐怖を伴い、日常生活が送れなくなってしまうことをさします。
    最も多いのは対人恐怖感で62%にものぼります。普通の人は相手と会話しても、特に不快感や嫌悪感、恐怖感を抱くことはありません。しかし思春期に過度のストレスがかかると、相手の言葉や感情の変化に過敏になり、
    相手を怒らせたのは自分の問題とか、自分のことを嫌われているとかなどの思い込みが激しくなり、恐怖感でコミュケーションが取りずらくなります。これが最もおおい不登校の原因になっていることが多く、悪化すると 自分の考えが漏れている、見透かされているなど自我障害や関係妄想になっていることもあります。
    次に多いのが不安が止まらない、嫌な考えが出てきて寝れないなどの精神症状で、20%ありました。普通の人はいろんな考えを出したり、考え方を変えたりもできますが、考えが勝手に出てきては自分を苦しめているような感覚に陥ります。例えば 対に合格しない、価値がない、自分は馬鹿だ、、とかです。これは切り替えができず、まるで真実のように感じてしまうので、本人に非常に苦痛に感じます。リストカットなどの自傷行為ををすると これらの考え(自生思考とも言います)が消えるため、自傷行為が止まらない原因でもあるようです。悪化すると幻聴や妄想などの症状に変わってきます
    思春期の摂食障害を伴う女子生徒に多い症状が容姿に対する嫌悪感で12%あり、最近では増加傾向です。本人は自分の姿が醜い、痩せているのに太っているなど思い込みが激しく、拒食状態になったり、鏡をみて泣き出したり興奮したりがあります。親や友人が 外見は悪くないといくら説得しても まったく受け入れができません。醜形恐怖ともいいますが、悪化すると醜形妄想になったりもします。
    感覚過敏(いわゆるHSP傾向)で うるさい音が苦手、においに過敏、雑踏の音がつらい、などが6%ありました。
    親から見ると家では比較的元気な様子だが、学校に行くと気分が悪くなるなど理由は全くわからず、まるで本人が怠けているような印象を持たれていることも多く、怠けていると決めつけて、𠮟りつけていることもおおく、これは病状を悪化させるだけですので注意しなければなりません。対人恐怖感は家族では出にくく、中途半端に知り合っている生徒に強く出るのが特徴です。
  • ③ストレスと環境問題本人にかかるストレスの背景を調べたものです。
    環境ストレスはより複雑化しており、本人だけの力では自己解決できない物ばかりです。
    受験と勉強のストレスはかなり多く、学校の交友関係や家庭内には全く問題が見当たらないが、受験のストレスで病気になる子供が22%ありました。中学受験の塾の指導なども問題はあるかと思いますが、では小学校の頃から中学受験をさせて、病気になる子供とならない子供との差は一体何でしょうか。
    1,心の成長が遅い子供は受験をさせると過剰なストレスがかかりやすい(向き不向きがある)
    2,勉強ができないと人として失格や無価値などの追い詰められた考え
    3、自分自身のストレス管理が苦手(体調が悪くなっても、頑張ってしまうなど)
    次に交友関係のトラブルがあって、SNSを使った陰湿ないじめや仲間外れなどが、ストレスになってる問題で単独では16%にもなりました。いじめのやり方がより巧妙になっています。このようないじめ問題は小学校高学年から中学校に多く、高校生になると少なくなってくる傾向があります。学校側も生徒たちのこういった行動を関知できず、本人が親にも言えない状況が続いて、より介入がしずらく本人が抱え込んでしまっているケースもよくあります。一番家庭内不和の問題だけでストレスなっているケースでは、以外に少なく8%でした。これは家では不満が多いけど学校ではうまくいっているため、なんでも話せる親友や先輩の存在、学校や私生活の楽しさがあるので、学校でストレスが緩和されていると思われます。
    また一番多いのは、家庭内不和に学校のトラブルが同時に起こっているケースで、本人のストレスを緩和する場所がないため もっとも精神症状を悪くしやすいのではないかとおもいます。家庭内不和で多いのは 両親の仲がわるい、両親の精神状態が不安定、養育の不安が強い、しつけが厳しい、いたわりがないなどです。
  • ④疾患別受診動向精神症状がかなり重複しており、実際はいろんな病態が混じっており正確には出せませんでしたが、大まかな統計と考えてください。統合失調症の前駆症状を完全に満たす症例はあまり多くなく、どちらかといえばうつ病が多く、その次に適応障害がおおい結果となりました。適応障害とは環境ストレスがなくなると病状もよくなるのがこれに該当します。例えば普通高校から不登校になり通信高校に転校して、半年以内に全回復したとなると、適応障害と診断されます。最近増加傾向にあるのが摂食障害で、母娘の愛着に起因するもの、、ARMS醜形妄想によるもの、発達障害のこだわりからくるものなど要因は様々ですが女子高校の3人に1人の割合です。その他は観察期間の最後まで診断がつかなかった症例です。