- 嗜癖問題(アルコール依存症など・・・)
- 中でも、アルコール依存症が代表的ですが、このほか、摂食障害(拒食症と過食症)、ギャンブル依存症(病的ギャンブル癖)、借金癖、買物依存症、ワーカホリック(仕事中毒)なども嗜癖性の症状ないし病態と考えられており、さらに恋愛依存、セックス依存、暴力的人間関係、共依存などは「人間関係」への嗜癖と呼ばれます。共依存というのは、自分が相手から必要とされることによって自己の価値を見いだすという、依存症者の配偶者にみられ易い対人関係の病的パターンです。従って、依存症になっている本人は、依存することをやめられず、依存を続けるためにさまざま手段で周囲を巻き込んでいきます。また依存していることが病気である認識はなく、治療の意志もないことが特徴です。また自分に都合が悪いことを認めようとしない(否認)が根底にあります。これらの嗜癖問題はすべて、心の中の空虚感を埋めることから始まり、そして依存対象への没頭が習慣化し、エスカレートし、やがてコントロール不能になります。依存症という名前がつく段階になると、本人の意志の力だけで嗜癖から抜け出すことは不可能になってきます。空虚感を埋めるためにはひとつの依存では満足できず、同時に2つ以上の嗜癖が合併することは少なくありません。酒+ギャンブル+摂食障害+病的窃盗(万引き癖)といくつかの嗜癖問題を抱えていきます。このように多重嗜癖となってもなお依存することやめられず破滅への道へ進んでいきます。嗜癖問題は家族全員に起こることがよくあり、父親がアルコール症、母親がギャンブル依存症、娘が摂食障害、息子が病的窃盗というのは極めてよく見られる嗜癖家族のパターンです。
- 初診への結びつき
- このように嗜癖問題では、家族関係や恋愛関係など人間関係が共依存であることが多く、この人間関係が普通ではないことに家族の誰かが気づく必要性があります。嗜癖問題は家族相談から始まると言っても過言ではないでしょう。多くは世間体やプライドがあり家族問題を内密にし自己解決する方々も多いようですが、それほど簡単ではありません。家族の秘密である嗜癖問題を家族外に持ち出したこの最初の相談者を勇気ある行動として、医療機関に迎えてあげなければなりません。この相談者の悩みを聞き、慰め、相談に来られた勇気をたたえ、何としてもこの人を家族全員への治療につなげていくようにしていかなければなりません。そこで当院だけではなく、嗜癖問題の専門カウンセリング、専門病院や自助グループなど、嗜癖問題の本質を理解し、嗜癖者本人や家族の苦しみを理解できる人たちのつながりです。特に自助グループは有効です。依存症本人が受診しなくても、家族が少しずつ嗜癖の本質を理解し、共依存の関係性から脱出できたときに回復は可能であると思います。