- 養育環境について
- 親は100%ではありません。おそらく子育てに100%自信がある親はいないでしょう。しかし、子供が情緒不安定になる要素はさまざまで、家庭以外に学校問題(友人関係、成績、教師の問題)があり根本的に解決が困難な場合があります。学校問題では確かに子供自身で解決できないならば、両親が学校関係者と相談し介入しなければなりません。しかし、子供の立場を考慮しつつ、自己解決能力を高めていけるように養育することだと思います。親は自分の意見が100%正しくない事を自覚しながら、親の意見を押しつけないように見守ることも大事です。両親にも世間体があり家庭問題にふれてほしくないことであったりや学校側の職員同士のトラブルなどもあり、より状況は複雑で容易に解決できないことも多くなりました。世間では子供の情緒不安定は愛情不足と騒がれていますが、実際本当の愛情は何なのかわからない人も多いようです。なかには子供のためには何でもしてあげるのが愛情だと思っている両親もいます。ときには厳しく躾けられても、子供が成長して大人になって自立したとき、本当に親の愛情がわかる人もいます。子供にとって今、何が必要なのか? 常にそれを考えていかなければいけません。子供がが成長して大人になって立派に独立し家庭を持ったとき、親に感謝できて 初めて愛情を認識できる人も少なくありません。最近では このように愛着の問題を抱える家庭が多くなりました。
- 子供の心の成長
- 子供がたくましく立派に成長していくに欠かせないのが 養育環境です。近年では 夫婦不仲で喧嘩が絶えない。両親とその祖父母との関係が悪化、姑問題、親の経済的な問題(借金)など、家庭の諸問題に子供が巻き込まれることがよくあります。子供は自力で対処していく能力がありませんので、確実にその影響を受けます。とてもいい子で育てやすい反面、体調不良が続くときは要注意です。まさか、うちの子が・・・・と思っているお母さんは意外に多いのかもしれません
- 発達障害の子供は育てにくい? +
- 自閉スペクトラム傾向がつよいお子さんは 感情表現が苦手、感情をうまく言語化できない、怒りや悲しみなどの内的感情をためやすいなどがあります。こだわりが強く、好きなものに熱中しやすい反面、嫌いものは徹底的に嫌いなど両極端です。また周囲の空気を読むのが苦手で、その場に適さない言葉をしゃべったりして、反感をかいやすいのもよくあります。言葉のニュアンスも一般的な感性と違っていて、真剣に言った言葉が逆に笑われたりもします。また、少しでも嫌なことがあると執着し、自分の中で解決するまで根深く思い続けます。また依存心も強く、依存する相手に罪悪感を抱きにくいためどこまでも依存する傾向があります。通常のお子さんであれば 最初は親の手助けが必要で、自立するにつれて次第に親の手が離れていきます。ところが発達傾向のお子さんでは親の手助けが当たり前との感覚を持ちやすいので、成人しても依存します。
- 現在では、発達障害の専門医療機関も増えて、学童期から発達障害と診断されるケースも少なくありません。ところが多くの医療機関では発達障害の診断を行うだけで、適切な養育指導を行えるところはまだ少ないのが現状です。両親は発達障害の病名を宣告されて、途方に暮れている場合も多く、子供の問題行動の具体的な対処法がわからないことが大きな悩みのひとつでもあります。また、母親の精神的不安定も養育に大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、それに気づいていない方も多く、母親の精神的不安定を先に治療するケースも少なくありません。最近、発達障害が病的レベルではない軽度であるにもかかわらず、家庭環境や学校の問題などで精神症状が悪化し、体調不良や不登校、家庭内暴力などの問題行動に発展するケースが散見されます。昔であれば、病的レベルではない軽度の発達障害のお子さんは、個性的でどこか風変わりな子として養育され、周囲もそれを承知で受け入れ、のびのびと育っていきます。そして、自分の得意分野が何であるか気づき、それを伸ばすことで、将来、大人になって社会的に成功している方々はたくさんいます。発達障害をどう治療するかではなく、どう療育するかが大事ですが、愛情が大事と言われ続け、気づいてみると日々、子供に振り回されて自分を見失っているお母さんも多いようです。
- 発達障害には遺伝が関係する先天性のものと、生まれた時には障害が無かったにも関らず、その後の事故や病気などによって持つことになった後天性のものとがあります。では先天的要因が強いと言われる広汎性発達障害(自閉スペトラム傾向)、ADHD(注意欠陥多動性障害)などは、残念ながら遺伝することが多く、子供が発達障害であると親も発達障害の素因もっていることが多く、子育てに支障をきたすケースがあります。しかし、多因子遺伝なので一部だけあることもあるし、ほとんど遺伝していることもあります。
- 親が発達障害である場合の問題点について
- 親が発達障害の傾向があると、子供の視点に立って物事を考慮することができないため、以下の問題点を生じやすいと考えられます。
- ①子供に無理難題な注文をしてしまう(これは年齢に応じた子供の能力を客観的に判断することが困難であるからと言われています)
- ②親にもこだわりが強く、子供が思い通りにならないとかんしゃくやパニックをおこす。(考えている想定の状況になると対応できないからです)
- ③親も社会への適応能力が低いため、親もうつ病などの精神疾患を発症しやすく、感情的に不安定となってしまう。また親がうつ病で心身ともに衰弱すると、子供に親の世話をさせすぎる傾向が見られますが、その親子関係が異常であることや子供にとって安心感が得られる環境ではないことのできないことの理解が乏しく、子供に過大なストレスがかかります。(子は親の面倒をみる義務があるとの言い分で、なんでもかんでも子供に押しつける)
- ④思春期以降の子供にいつまでもべたべたしたり、子供の友人に嫉妬したり、干渉したりします。(これは思春期の子供に対して、配慮ができないからです)
- ⑤子供から攻撃されるといつまでも根に持ち、やり返したい気持ちがたかぶる。(嫌なことに執着しやすく、根に持ちやすいためです。)
- ⑥子供の気持ちを理解することができないため、愛着の問題を生じやすい。(子供を保護する、安心させる、愛を与える、慰めるなどの行動や言動ができず共感性が低いことによるものです。)
- ⑦子供に対して性的ないたずらや激しい暴力、暴言などの問題行動がおこる。(これはモラルの理解できないことや良心の呵責が薄いことによります。)
- 親がもしひどい養育環境で育っても、発達障害の要素がなければ共感性や反省や振り返りなど自分を客観視することができるため、自己矯正していくことが多いのです。”私はこのように育てられて、かなり苦しんだ。だから子供には決して同じような思いはさせたくない” と感じているからです。とこらが親がに発達障害の要素があると振り返りや反省に乏しく、自分の価値観や考え方に執着しやすく、同じような養育をします。”俺はこのように暴力を受けて、打たれて育った。だから子供に同じ行為をして何が悪い” などの言動を言い放ち虐待が連鎖されやすいのです。また暴力を振るっても反省せず、子供の責任にしてしまいます。
- 発達障害は先天性(生まれつき)か後天性(家庭環境)か?
- 子供に過大なストレスがかかると 脳そのものに深刻なダメージを受けていきます。特にネグレクトや暴力などの恐怖、両親の不仲、母親が情緒不安定であると脳の伝達物質低下(ノルアドレナリンなど)がおこり、ADHDと同じような症状が出現してきます。また自閉傾向も強くなります。しかし、家庭環境を早期に改善することで 十分に回復可能な場合がおおいとも考えています。したがって発達障害の要素が少なくとも、愚劣な養育環境によって発達障害の症状は強く出てきます。これを発達障害の二次障害といいます。
- 養育環境が不適切な場合に起こる二次傷害について
- 一次障害は、症状を類型として定義するためのもので、多くの発達障害者はそれぞれの一次障害が社会との関係で引き起こされる二次障害を伴います。そして、発達障害者をケアする際には、二次障害も含めてサポートする必要があります。
- 養育環境が不適切な原因について
- ①条件付きの愛情 本来、親は子どもに無条件で愛情を注ぐものですが、(これを無償の愛=母性)、ところが親の愛情が無条件の愛ではなく、何らかの付帯義務を負わせる「条件付きの愛」であることが問題となります。これが継続的に行使される家庭では、子どもは親の愛を受けるために、常に親の意向に従わなければならず、親との関係維持のために努力をし続け、子供は常に親の感情欲求を満たすために生きていきます。この時点で親子関係は不健全であるのですが、このことが不健全であることが親子に自覚できず、子供が大人になっても親との不健全な関係性に終わりはなく、親の寿命が尽きるまで続けられます。たとえば有名大学に進学させたい欲求は子供より親が強く、幼少期から子供を勉強漬けにしているケースや母親が息子にべったりとまとわりつき、まるで息子の役割と恋人役割を兼任させているケースもあります。主に幼少期からこうした手段が用いられ始め、親の欲を満たすために子どもの精神を支配し、欲を満たすことができなければ愛情を制限するなどの行為が繰り返させられ、その結果、性格が卑屈になり、その後の人格形成に影響します。このような手段は子どもが成人する段階になっても継続され、引き続き成人した子ども(Adult Children)の精神を支配していきます。実はこの状況は非常に多くの家庭に存在しており、子ども(年齢に関わらず)は常に不健全な状況にさらされていますが、周囲からは一見してこのような家庭は、何ら問題のない普通の家庭として認識される場合が非常に多く「条件付きの愛」はしつけや教育と称される家庭の常識となってしまい、最も基本的な精神的虐待の温床となります。しかし現実に、無条件の愛を常に実行できるかというと、これは極めて難しいもので、健全な家庭を目指すには「条件付きの愛」を減らし、可能な限り無条件の愛を与える方法ですが、ほどんどの親はその境界線が曖昧であることも事実です。愛情あってのしつけですが、親は子供が自由に自分の意志で世の中を渡り合えるように養育していかなければなりません。残念ながら、子供が成人したとき養育方法の正誤の答えが返ってくるのです。