- 自閉症スペクトラム障害について(アスペルガー症候群を含む)
- 自閉症スペクトラムは、「広汎性発達障害」とほぼ同じ概念を指すものです。この中に、自閉症やアスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などが含まれます。これらはそれぞれ特徴があるのですが、これらはオーバーラップすることもあり、互いの境界線を引くのは極めて厳しいため、ここでは「自閉症スペクトラム」という広い言い方をします。知的に正常であるものを高機能自閉症または高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群)といいます。
- 小児自閉症について、症状は様々です。それに自閉症は症状が強い子もいれば弱い子もいて、健常児との境目はあいまいだといわれます。自閉症的な行動があくまでもその子の個性だとも考えられるので、判断が難しいものでもあります。ただし、医学的には自閉症を診断する基準が設けられています。以下の3つの能力障害が、3歳までの間に認められた場合に小児自閉症と診断されます。多くは3歳までに小児科医によって発見されるため社会的に支援が受けられることが多く、小児科医で神経発達障害の専門としている診療所から指導を受けられることが多く、日常生活でも手を叩く、首振り、体振りなどの反復運動や目潰し、肌引っ掻き、手を噛む、ヘッドバンギングなどの自傷行為やモノの並び・積み上げがルールにこだわるなどの強迫性や、そのような繰り返し行動が多いと学校生活でも支障を来すので、知的障害も多いことから特別支援学級などの支援を受けながら養育することが可能です
- 高機能自閉症について、知的に高い子供もいて小学生のときは非常に育てやすいことも希ではなく、発見が遅れてしまいます。当院に来院する自閉スペクトラム障害の多くは高機能広汎性発達障害である(アスペルガー症候群)です。特に受診時には、不登校、いじめ、引きこもり、友人関係がうまく作れないなどがおもな症状となっています。自閉症の症状は強い症状から病的レベルでない軽度の症状から様々です。以下の特徴が当てはまれば、ほぼ自閉スペクトラム傾向が強いと思われます。
- (原因)自閉症は、脳のある特定の異常のために起こります。三つの一般的原因――遺伝的欠陥・脳損傷・脳疾患――です。中枢神経系の機能不全で発達障害です。ただし、①親の指示的、拒否的な態度により発達障害(自閉症)になることはありませんが、子どもの呈する問題に感応して親の態度に問題が生じてくることはしばしばあり、これが自閉症の症状を悪化させていることがあります。②親自身に子どもと同質の発達の問題を有していることがあり、養育の不適切さを認めることがよくあります。この因で親も精神的に不安定で養育環境が安定せず、子供の症状を悪化させることがよくあります。→
- (特徴と病状について)
- ⑴ 対人関係や社会適応の問題
- ①人との関わるとき、独特なやり方で関わろうとします。場に沿わないスキンシップやなれなれしさなどの問題があります。
②人の表情、しぐさ、態度などを読み取るのが苦手。例えば苦笑いや微笑み、大笑いなどの違いや怒っているかムッとしているかの微妙な人の表情に気づきません。またアイコンタクトが苦手で視線をそらして話をしたりします。
③他の人の気持ちを感じ取るのが苦手で、自分の好きな話題ばかりしゃべり、興味がない話は聞きません。またそれが不適切な行動であるとの認識がありません。また自分の言動が周囲に与える影響がわからず、周囲が気分を害していても気がつかない(自分のどの発言が毒舌かわかりません)たまに本人の行動が微笑ましくて、周囲が笑っているのに馬鹿にされたと勘違いをします。その後本人が突然怒りだし、周囲は唖然とします。
④暗黙の了解、社会的なルール、マナーの理解が苦手です
・周囲にとって当たり前すぎていちいち言葉にしないルールの存在に気がつきません、また社会的な上下関係がわかりにく、目上の人でも思ったことを率直に言い過ぎる傾向があり、周囲から生意気に見えてしまうことがあります。
・場面によって微妙に変化する適切な行動がわかりません。いわゆる空気が読めないというのは、明文化されていない、ルール化されていない、その場の雰囲気を理解するということが難しいことです。これは自分の視点にとどまりやすい発達障害の、特に自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の傾向が強い人のもっとも特徴ともいえます。自分と他人を入れ替えて、相手を思いやることが苦手です
- ⑵ コミュニケーションの問題(言葉の遅れや状況に応じた言葉の使い方が困難)
- ①耳で聞くより、読んだほうが理解しやすい。また抽象的より具体的な説明でないと理解できないなど
②難しい言葉を使っていても意味をよく理解していないことが多く、意味を取り違えても気にしないなどの傾向があります
③言葉を字義どおりに受け取ります
・比喩や言外の意味(ユーモア、皮肉)は理解しにくいし、冗談が通じない。また、どこまでが冗談でどこまでが本気かわかりません。
④形式ばった話し方や細かい点にこだわった話し方をします
・難しい用語を用いて妙に仰々しい言い方をしたり、普通は会話では使わない単語を使って話す
・話の本筋ではない細かい内容にこだわって話す。話が飛び、まとまりにかけ何が言いたいのかわからないこともしばしばあります。
⑤抑揚が乏しい話し方をする
・場面にあわせて声の大きさを調整したり、声に抑揚をつけるのが苦手
⑥会話が上手ではない印象を持ちます。
・相手の人に合わせた言葉づかいが出来ないし、場面にあったくだけた言い方が出来ないので堅い人と思われてしまいます。
・話の切り出し方がわからず、唐突に話を切り出してしまう。また前置きなく話題をかえてしまい反感を買うこともしばしばあります。
・大勢の人が話し出すと混乱し、集団の中でどの人の話に集中したらいいかわからないし、混乱します。
・相手の質問に答えようと考えているときに話しかけられると答えられないこともしばしばあります。
・相手の言ったことをそのまま単刀直入に受け止めてしまいがちです。そのため騙されやすかったり、利用されたりしやすいのです
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- ⑶ 想像力や柔軟性が乏しく、変化を嫌うことや感覚面の問題、限局した興味とこだわり
- ①初めての経験することや突然の出来事への対応が苦手です
②時間の流れを把握しにくく見通しが持ちにくいし、予定変更がされると見通しが立たず落ち着かない
③興味のあることが限られている。興味のあることには夢中になるが興味のないことはしないし、興味のない話は聞かない
④こだわりがある。食事の内容や食事の材料、食器の位置、食べる順序などのこだわりがあり、その自分のルールに執着します。感覚的な問題もおおく、そのルールに大きな理由もないこと多いのが特徴です。パターン的行動、生真面目すぎて融通が利かないのもあります。
⑤視覚、触覚、味覚、聴覚、嗅覚が過敏で、体調不良の問題に執着しやすい。
⑥いくつかのことに同時に注意を向けることが苦手で、話を聞きながら字を書いたり、考え事をしながらやり取りをしたりが苦手です
また、注意が固定してうまく移せないこともよくあります。大切でないことに注意が向いてしまう。また怒られたりにも過敏で嫌な出来事も忘れにくく、いつまでも根深く執着し、くよくよします。嫌な出来事から、切り替えるのが苦手でトラウマになりやすい傾向があります
⑦物事の因果関係がわかりにくい
⑧感情や衝動のコントロールが苦手で、一度イライラするとなかなかイライラがとれません。腹がたつとかんしゃくを起こし、パニックになったりもします。
⑨体の動きがぎこちない、手先が不器用、球技が苦手ことが多いようです。計画をたてること
⑩自分で物事を計画して、複数のことがらを連続して実行していくことが苦手なことが多く、ある程度周囲がプランを立ててあげないと、一人で複数のことを連続して実行していくことは難しいようです。よく子どもの自主性を尊重する教育と言って、何もこちらで準備しなくて子どもの自由にさせるやり方が一部で推奨されていますが、このやり方でいくと何をやったらいいかわからずパニックになるような事が多くなり適切ではありません。しかしやり過ぎると依存傾向が生まれ、助けてもらうことが当たり前になって来ます。
- 養育環境について(対応の基本)
- ①発達障害について関わる両親や親戚その他、大人が学ぶ事が大事です。援助の基本方針は自閉スペクトラムを理解するということです。アスペルガー症候群の子どもは社会性、コミュニケーション、想像力の3領域に障害があります。困った、不適切な行動、風変わりな行動をとったとしても、「わざとやっている」とか「ふざけている」とかとらないで、何が問題点なのか、現状を把握することが大事です。そのような行動の多くは自閉スペクトラム特有のものととらえてください。
②予測しやすい環境を作る。予測できないことや変化に対して苦痛を感じることが多いのです。どこで何が予定されているかということをなるべく前もって伝えましょう。言葉だけでなく文字(年少の場合は絵や写真)で伝えるのが効果的です。つまりスケジュールを予告することが大切なのです。現実の生活では予定どおりにいかないことも沢山あります。予定外の出来事やスケジュールの変更も、できるだけ本人にわかるようにたとえ直前であっても明確に伝えることが大切今後の予定はあらかじめ明示する。「こうあるべき」という理想像や正論に固執せず「実現可能な小さな目標」を積み重ねることが大事です。理想が高くなりがちなので、理想が高くなることの欠点も説明することが重要です。
③ルールや指示は明確にしましょう自閉スペクトラムの子どもにとって「暗黙のルール」の理解は困難です。ルールはできるだけ明確で、その子どもの能力の範囲内で実行可能なルールにしましょう。曖昧な指示や皮肉、言外の意味の理解を期待した指示は理解できないと思った方が良いでしょう。場に関係のないことをしつこく聞いたり話したがる場合には、「今この場ではその話はできない」とか「この話は5分で打ち切る」などと情況に応じて明確に伝えた上で、「いつどこでなら話をしても良い」という代替の提案をできるだけするようにしましょう。「指導」「命令」する前に、まずは丁寧かつ具体的に一般論として「説明」します。説明や指示は口頭だけでなくメモ・図・写真で視覚化することも重要です。言葉だけだと十分に理解してくれないことの問題点もよくあります。これは怒られることに過敏であるがために、一般的な話を優先することが自尊心を傷つけずにすみます
「こうあるべき」という理想像や正論に固執せず「実現可能な小さな目標」を積み重ねる。理想が高くなりがちなので、理想が高くなることの欠点も説明することが重要です。
④できるだけポジティブに接しましょう。上から目線や否定的な言動に対して敏感です。また怒られたりにも過敏で、嫌な出来事も忘れにくく、いつまでも根深く執着し、くよくよします。嫌な出来事から、切り替えるのが苦手でトラウマになりやすい傾向があります。思春期頃になると自分の言動が他の多くの子どもと違っていることに気づき、落ち込むことがあります。小学校などでも、どちらかというと教師や大人から叱責される行動をしてしまうことが多いので、もともと自信をなくしがちです。できるだけ長所をみつけて誉めるようにしましょう
⑤安全で穏やかな環境が必要です。騒々しい環境が苦手で、余分な刺激の少ない静かな環境の方が本来の能力を発揮できます。大声で叱ったりすることは逆効果です。できるだけ穏やかに接するようにしましょう。トラブルがあって興奮している最中は、説得や叱責は無効なので話は落ち着くのを待つことが重要です。教師や親はできるだけ感情的にならず穏やかに冷静に話をする姿勢を持ちましょう。大人が感情的になってしまうと、大人が言いたいことよりも感情的になったということのみに執着し、言わなければよかったなどの後悔も残ります。